ボラリティとは?

ボラティリティは、日本語にすると「価格変動率」と言います。これだけでは、パーセントで書くのか、pipsで書くのか、そもそも何の数字なのか、わからないと思います。

直訳すると「落ち着かない性質のもの、不安定なこと」になるのですが、これを相場に当てはめると、「乱高下すること」を意味します。乱高下をイメージしていただくために、次のドル円の5分足チャートを見比べて下さい。

ボラティリティの高低の比較

左側はトレンド相場で、価格が上下に大きく変動しているのがわかりますよね。この状態を、「ボラティリティが高い」といいます。経済指標の発表後などは、急騰や急落を繰り返し、ボラティリティが高くなる傾向があります。

一方、右側はレンジ相場で、価格の変動はあまりありません。この状態を、「ボラティリティが低い」といいます。日本時間の早朝など、売買する投資家が少ない時は、ボラティリティが低くなります(詳しくは後述します)。

このように、ボラティリティ(価格変動率)とは、一定期間における、値幅の大きさを表しているとお考え下さい。

整理すると、次のようになります。

ボラティリティが高い:価格変動が大きい時

ボラティリティが低い:価格変動が小さい時

ただし、ボラティリティは目に見えないためか、解釈の仕方は様々です。単純にpipsの「値幅」で解釈する場合や、「割合」で解釈する見方もあります。

割合とは、例えば、1時間で100pipsの値幅が出たとします。1時間のうちに、何百回や何千回と価格変動は起きているので、その割合こそボラティリティの高さだとする視点です。

ちょっと難しいですね。

そのため、まずは、ボラティリティには色々な見方があると認識いただければ大丈夫です。乱高下して値幅が出る相場をボラティリティが高い、そうでない相場をボラティリティが低い、と覚えておけば問題ありません。

2.ボラティリティの調べ方

JFXとヒロセ通商には、ボラティリティを計算してくれる便利なツールがあります。ボラティリティの計算方法を理解すると、自ずと「ボラティリティとはこういうもの」と分かってきます。

なお、ヒロセ通商とJFXでは、算出方法が少し違うので、それぞれご紹介します。

2.1.JFXのボラティリティ表

JFXのサイトを開き、左サイドバーの「情報コンテンツ」の中にある「ボラティリティ表」をクリックします(直接ご覧になる場合は、「ボラティリティ表」をクリックして下さい)。

JFXのボラティリティ表の場所

すると、ボラティリティ集計結果(東京市場時間帯の時間足比較・前週)が表示されます。

JFXのボラティリティ表

そして、目的に応じて、右上より「期間選択」と「集計方法(取引時間帯指定or時間足指定)」を選びます。

最後に、「決定」ボタンをクリックすると、瞬時に集計結果が表示されます(赤い数字が、ボラティリティ値)。ボラティリティが大きい通貨ペア順に表示され、ローソク足の高値と安値の値幅が大きいものが1位になります。

なお、JFXの計算方法は次のようになります。(ホームページより抜粋)

・通貨ごとの1分足4本値(始値・終値・高値・安値)を算出

・この4本値をもとに5分、10分、60分、1日の時間足ごとの「高値-安値」をpips換算

・指定された期間の取引時間帯で、先ほどのpipsを平均したものがボラティリティ値

ちなみに、上の画像の集計結果を見ると、上位は「ポンド(GBP)クロス」と「豪ドル(AUD)クロス」が多いですね。

ちなみに、ポンドクロスとは、ポンドドル以外の、対ポンドです。具体的には、ポンドオージー、ポンドニュージー、ポンド円などのことです。ポンド円は、ポンドクロスであると同時に、クロス円でもあります。

これに対して、ポンドドルは、ドルストレートになります。豪ドルクロスも同じで、豪ドル米ドル以外の対豪ドル通貨ペアのことです。なお、通貨ペアについては、『通貨ペアとは|FXトレードで勝つための正しい選び方』で解説してます。

このようにボラティリティが高いと、1回のトレードで利幅を稼ぐことができるので、スプレッドが広くても、特にデイトレードだと効率良くトレードできます。

このようなツールを使って、ボラティリティの高い/低い通貨ペアをトレードにどのように取り入れていくか、これから一緒に考えてきましょう。

2.2.ヒロセ通商のボラティリティ表

次に、ヒロセ通商でボラティリティをチェックする方法をお伝えします。

まず、ヒロセ通商のサイトを開き、左サイドバーの「MENU」の中にある「ボラティリティ表」か、画面右側に固定で置いてある「ボラティリティ表」をクリックします(直接ご覧になる場合は、「ボラティリティ表」をクリックして下さい)。

そして、集計方法は、右上から選択します。

ヒロセ通商のボラティリティ表ヒロセ通商のボラティリティ表は、JFXよりも長い期間で算出できるのが特徴です。なお、ヒロセ通商の計算方法は次のようになります。(ホームページより抜粋)

・通貨ごとに、1分足4本値の「高値-安値」を算出

・算出した「高値-安値」をpipsに換算

・同営業日内の先ほどのpipsを合計したものがボラティリティ値

さて、JFXとの算出方法の違いは、JFXでは時間足指定がありましたが、ヒロセ通商では営業日ごとの算出方法である点です。

ただし、営業日といっても、日足の高値と安値の値幅ではなく、上の囲いの中に書いてあるように、日足を形成する中の値動きです。1分足4本値で算出していることにご注目下さい。

3.リクイディティ(流動性)とセットで考える

ボラティリティを知ると、「リクイディティ」というワードも聞くようになります。

リクイディティとは、「流動性」のことで、売買したい時に、すぐに実行できるかどうかの性質です。ボラティリティとも関連性があるので、セットで押さえておきましょう。

まず、リクイディティが「高い」か「低い」で、次のように言うことができます。

リクイディティが高い:取引参加者が多く、取引量がある状態

リクイディティが低い:取引参加者が少なく、取引量がない状態

価格は、買いたい人と売りたい人がいるから決まりますね。そして、自分が売りたい時に買い手がいないと、売ることはできません。

わかりやすいように、不動産で考えてみましょう。

例えば、人が誰も住まない、人里離れた土地を売ろうとしても、売り手はなかなか現れないでしょう。売りたい時に売れない状態が、「流動性が低い」と言います。一度買ったら、なかなか売れない状態ということです。

不動産は極端な例ですが、FXも同じです。為替では、1秒間に何回もレート更新していますね。売買が成立しているからこそ、レートが更新します。つまり、為替市場は、常に市場参加者がいる状態にあります。

そして、一時的に、参加者が少なくなる時があります。このような時は普段と違う値動きをするので、注意が必要です。

参加者が少ないと、売りたいレートのところに買い手がいないことになります。買い手がいないと、どんどん価格は下落していきますね。そうすると、投げ売り(いくらでもいいから売ってしまうこと)が出て急落することがあります。

また、参加者が少ないと、いつもよりも少ない取引量で相場を牽引できるため、機関投資家が意図的にトレンドを形成したり、暴落させることもできます。

このように、リクイディティが低いと、結果として、ボラティリティが高い相場になることがあります。逆に、リクイディティが高くても、ボラティリティは低い相場もあります。

そのため、リクイディティ(変動率)とボラティリティ(流動性)は、単体ではなく、セットで考えることが重要です。

特に、数pipsを狙って売買するスキャルピングの場合、ボラティリティとリクイディティ次第で値動きが変わるため、損益に影響を与えます。

4.ボラティリティの判断方法

ボラティリティの高低を認識する上で一番重要なことは、リアルタイムの相場で理解することです。つまり、「現在の相場はボラティリティが高いのかどうか」ということです。トレードする前にこれを把握することで、より適切な売買の判断ができるようになります。

経験が浅い方でも、すぐに判断できるおすすめの見分け方は、

トレンド相場

レンジ相場

の見極めをすることです。往々にして、トレンド相場だとボラティリティは高く、レンジ相場だとボラティリティは低いです。相場の性質として、このように覚えておけば問題ないでしょう。

下のチャートは、ポンドドルの30分足チャートです。

ポンドドル30分足チャート

レンジで推移していた相場が、Aで下へブレイクしました。ここから下降トレンドがスタートしていますね。

また、ABCDは、それまでの安値を更新してトレンドを強めたポイントです。このような箇所では、ボラティリティが非常に高くなります。チャートで見ても、陰線が連続したり、他の箇所と比べてローソク足が長くなっていることがわかります。

ABCDのようなポイントでは、短い時間足(特に1分足)を見ていると、ボラティリティの高さが非常によく分かります。そのため、スキャルピングをする場合、ボラティリティが高まるポイントの見極めができるようになると、利益を出しやすくなります(詳細は、7章で解説します)。

5.ボラティリティが高くなる3つの時間帯

しかし、ボラティリティが高まるまでずっとチャートを見て待つのは大変ですよね。しかし、心配ありません。なぜなら、ボラティリティが高まる時間帯は、おおよそ決まっているからです。

為替市場は、株式市場と異なり、東京証券取引所のような取引所が存在しません。月曜日から金曜日まで24時間取引ができますが、1日のうち、売買が活発になる時間帯は次の3つです。

アジア:日本時間9時~12時

ロンドン:日本時間15時~18時

ニューヨーク:日本時間21~25時

この時間帯は、その地域の機関投資家が出社して取引を開始する時間にあたるので、為替市場はもちろんのこと、株式式市場や債券、商品など金融マーケット全体が活発になります。売買が活発になると、必然的にボラティリティが高くなり、トレンドが発生するようになります。

下のチャートは、1日を3つの時間帯に分けたものです。

アジア時間とロンドン時間とニューヨーク時間

Aの白い大きな四角が、ある1日の7時から翌日の7時です。左から、アジア、ロンドン、ニューヨークの3つの時間帯です。この日は、ロンドンタイムの午前にあたる時間帯で、上昇トレンドが発生したことが分かります。

FXの値動きの特徴は、3つの市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)の午前はボラティリティが高くなり、この3つのうち、どこかでトレンドが発生することです。

これを知っておくだけでも、戦略が立てやすくなるので、必ず押さえておきましょう。詳しくは、『FXの取引時間別の特徴とトレード戦略の立て方』で解説しています。

6.トレードで意識すべき2つのポイント

ボラティリティが高くなる時間帯が分かっても、今日がどうなるのかの見極めが必要です。

毎日、全ての通貨ペアのボラティリティが高まるわけではりません。時期によって、ボラティリティが高まる通貨ペアや動き方は、全く異なります。

そのため、準備をしていないと、たとえボラティリティが高くなっても、どのようにトレードしていいのか分からないです。

大事なことは、未来の相場でボラティリティが高くなった時に、どのようにトレードするかの準備をしておくことです。そのためには、前日までの相場を分析し、次の2つのことまで考えておくことが大切です。

・ボラティリティが高い通貨ペアは何か

・充分なリクイディティはあるか

これを事前に考えることで、容易にトレード戦略が立てられます。順番に見ていきましょう。

6.1.ボラティリティが高い通貨ペア

先ほど、JFXのボラティリティ表で見たように、ポンドクロスや豪ドルクロスは、元々ボラティリティが高い通貨ペアが多いです。

昔は、ポンド円がハイボラティリティの代表でしたが、2008年のリーマンショックで大暴落し、250円まで到達した価格が半分以下になりました。

しかし、それ以降は、低い価格のまま推移しているので、以前ほどのボラティリティはありません。それでも、ドル円よりボラティリティが高いことは確かです。

このように、ボラティリティは、月単位、週単位、日単位で刻々と変化しています。

昨日までドル円が乱高下していても、ファンダメンタルのイベントが終われば、注目度が落ちて翌日からピタッと値動きが膠着することもよくあります。そのため、ボラティリティが高い通貨ペアは、時期によって変化しているとお考え下さい。

例を挙げます。下のチャートは、2016年11月のアメリカ大統領選挙の時のドル円の日足です。

アメリカ大統領選挙時のチャート

Aの四角がちょうどその時で、マーケットにとって大きなイベントで、強烈な上昇トレンドが発生しました。驚くことに、1か月で1,500pips以上も上昇しました。ボラティリティが非常に高く、スキャルピングしやすかったことを鮮明に覚えています。

しかし、イベントが終わると、注目は他の通貨ペアに移り、ドル円は長いレンジ相場に移行しています。Aの頃のようなボラティリティはなく、同じ通貨ペアとは思えないほど、値動きが変化してしまったことがわかります。

このような変化は、他の通貨ペアでも起こります。時期によって注目される通貨ペアと蚊帳の外になる通貨ペアがコロコロと入れ替わり、ボラティリティもリクイディティも大きく変化していきます。その変化についていけないと、同じやり方でトレードしても通用しなくなります。

そうならないよう、現在注目されている通貨ペアを探し、日々のボラティリティの変化に注目し、さらに3つの市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)に分けて、その日の値動きを注視することがポイントです。

6.2.充分なリクイディティはあるか

ボラティリティが高くても、トレードで勝てるとは限りません。上述した、リクイディティ(流動性)も考慮する必要があります。特に、スキャルピングをやる場合、リクイディティの有無で値動きが大幅に変わります。

まず、リクイディティが高い状態は、あまり意識しなくていいでしょう。なぜなら、これが普通の状態だからです。ボラティリティが高い時間帯は売買が活発になるので、売りたい時に売れて、リクイディティは充分です。

気を付けなければいけないのは、リクイディティが低くなる時間帯で、機関投資家が相場から離れる時です。1日の中でいうと、日本時間の早朝5時~7時前後です。

この時間帯は、日本の機関投資家は出勤前です。欧米では夕方から夜間にあたり、世界のどのマーケットでも参加者が少なくなり、リクイディティが低くなり、値動きが不自然になります。

不自然とは、少し大きな注文が入っただけで一方向へ大きく動いてしまうような状態のことです。大きな注文を受け止めるだけの反対売買も少ないため、急騰や急落が起きやすくなります。もしくは、その逆に、全く動かない膠着した相場になります。

また、注文自体が無いので、レート変動が無くなります。そうなると、ローソク足が変な形になります。これは、下のドル円の1分足チャートを見ると分かります。四角い箇所にご注目下さい。

リクイディティが低いチャート例

ご覧のように、1分間で1pipsも動いていない(ローソク足の形がない)ものがあれば、上ヒゲと下ヒゲが極端に長いローソク足もありますね。前後のローソク足と比べると、不自然なことが分かります。

このような時は、1分単位でトレードするスキャルピングは影響を受けます。期待値が高いトレード戦略を持っていたとしても、リクイディティが低い時に通用しなくなる可能性があります。

なお、期待値については、『ランダムウォーク理論|トレードで勝てる人の確率と期待値の考え方』)で解説しています。

リクイディティが低い時でも、あなたのトレードルールが、ボラティリティとリクイディティを考慮したものか、見直してみて下さい。ボラティリティが高い相場では通用しても、リクイディティが低い相場では通用しないとなると、勝てない時期がいずれ訪れます。

このことは、先ほどの1日の中における1分足の例ですが、数か月に渡ってボラティリティもリクイディティも低い時期があったりします。特に、スキャルピングなどの短期売買は常にこの2つを考慮する必要があります。値動きが変わって勝てなくなった、というのでは後の祭りです。

では、上記2つの観点から、ボラティリティが高い通貨ペアと低い通貨ペアにはどんなものがあるのか、具体的に表で確認してみましょう。

ボラティリティ リクイディティ 通貨ペア例

メジャー通貨 高 高 ドル円、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドル、

ユーロ円、ポンド円、豪ドル円など

マイナー通貨 中 低 フォリント円(HUF/JPY)

クローネ円(NOK/JPY)

ズロチ円(PLN/JPY)

トルコリラ円(TRY/JPY)など

メジャー通貨ペアは、リクイディティが低い時間帯や時期がありますが、ボラティリティもリクイディティも基本的には高いと覚えておいて問題ないでしょう。

一方、マイナー通貨ペアは、聞いたことないような通貨ペアばかりですね。トルコリラ円(TRY/JPY)は、スワップポイントが高い通貨ペアとして馴染み深いかもしれません。しかし、そもそもリクイディティが低いので、スキャルピングを含む短期売買には不向きです。

マイナー通貨ペアでも、スキャルピングができないことはないかもしれませんが、自然な値動きをするメジャー通貨ペアを差し置いて、あえて選択する理由はありません。

7.トレードスタイルによるボラティリティの判断方法

この章では、私のトレードスタイルごとの戦略と、どこに着眼しているかをお伝えします。

もちろん、これはほんの一例で、利益を上げる方法は無数にあります。一つの例として、参考にしていただければと思います。

まず、FXのトレードスタイルには大きく分けて3つです。

①スキャルピング

エントリーからイグジットまで、数秒から数十秒で完結させる超短期売買。損益変動のリスクが非常に少なく、数pipsという薄利を何度も取ることでコツコツ利益を上げる。トレード回数が莫大で、毎日集中して数時間トレードできる環境が必要。

②デイトレード

数十分から数時間の間、ポジションを保有するスタイル。1回のトレードで利幅が稼げるので、無駄なトレードが無くなり、効率よく利益を上げることが可能。

③スイングトレード

一度ポジションを持ったら、数日から数週間は保有するスタイル。戦略を立ててポジションを取るまでにある程度の時間を要するが、エントリー後は相場に張り付く必要がなく、時間が取れない人でも可能なスタイル。

トレードスタイルによって、ボラティリティとリクイディティで考慮するポイントは違います。

次から具体的に説明していきますが、まだトレードスタイルが決まっていない方や、勝つための手順が知りたい方は、『FXのやり方|初心者が最初に身につけるべき9のコト』を先に読んでから読み進めると、理解しやすくなるはずです。

7.1.スキャルピングはエンベロープ

トレードにおいて、相場の流れに逆らってエントリーする逆張りは危険だと言われます。しかし、スキャルピングに関していえば、順張りも逆張りも有効です。保有時間が数秒から数分のトレードなので、どちらのやり方でも優位性はあるでしょう。

ポジション保有時間が長くなる15分足以上の上位足で逆張りすると、リスクリワード比率(損益率)が悪くなるので、長期的に見て期待値は低くなります。なお、リスクリワード比率については、『バルサラの破産確率でトレード技術を飛躍的にアップさせる方法』で解説しています。

ただ、逆張りだから危険というわけではありません。リスクリワードが悪くなるから良くない、というだけです。

スキャルピングは、ボラティリティが高くなると、とても優位性のあるトレードができます。なぜなら、1分足を形成する過程で、上にいったり下にいったりと、乱高下するからです。

では、私がスキャルピングでボラティリティを何で測っているかというと、エンベロープです。エンベロープは、トレードルールにも活用でき、ボラティリティを測るにも最適です。

下のチャートをご覧下さい。

エンベロープのゾーンの解説

まず、移動平均線を表示させ、その後にエンベロープを6本表示します。そうすると、①②③④⑤の5つの空間ができます。ボラティリティが高くなると、ローソク足が移動平均線から乖離し、この5つの空間のどれかに到達します。

ボラティリティが急激に高まった時は、⑤へ到達します。しかし、通常の短期トレンドだと、①で反転する、というイメージです。このように、私は、エンベロープを使って、ボラティリティの高さを5段階で判断しています。

なお、エンベロープを使った私のスキャルピングのトレードルールは、『エンベロープのFXでの実践的な使い方』で解説してます。

7.2.デイトレードとスイングトレードは移動平均線

次に、私のデイトレード手法は、日足、4時間足、1時間足などの上位足で大局を把握し、15分足でエントリータイミングを測るというものです。

次のチャートは、「4.ボラティリティの判断方法」でも使ったポンドドルの30分足です。3本の移動平均線にご注目下さい。移動平均線は、ローソク足の集合体ともいえるインジケータ(テクニカル指標)で、ボラティリティを図るのに極めて有効です。

デイトレードのチャート設定

トレンドには、短期、中期、長期の3種類があるので、移動平均線もこれに合わせて、次のように3本引きます。

黄色:25EMA(短期)

水色:75EMA(中期)

赤色:200EMA(長期)

チャートの左側に注目すると、レンジ相場の時は3本の移動平均線が収束していますね。ローソク足が移動平均線を上下していて、方向感がありません。

ローソク足と移動平均線の位置関係を見るだけでも、ボラティリティの高低は分かります。特に、200EMAが水平の時は、レンジ相場になります。

一方、チャートの右側のトレンド相場では、移動平均線が、上から200EMA→75EMA→25EMAと規則的に傾いています。トレンドが発生すると、このように、短期・中期・長期の3本の移動平均線のすべての傾きが同じ方向へ一致した「パーフェクトオーダー」という状態になります。

パーフェクトオーダーなら、レンジ相場よりもボラティリティは高くなる傾向にあります。さらに、3市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)の午前にあたる時間帯は、よりボラティリティが高くなります。もし、トレンドが発生していれば、心の準備をしてトレードに臨めます。

次のチャートは、ポンド円の15分足で、4日分の期間です。

ポンド円15分足

これも、3本の移動平均線にご注目下さい。1日目で、パーフェクトオーダーになっていますね。これで、ボラティリティの心配はせず、下降トレンドの目線でいられます。戻り売り(下落トレンドの一時的な上昇で売ること)のスタンスを持つことができます。

次に、Aにご注目下さい。戻り高値を上にブレイクすることができず、そのまま下降トレンドに戻っています。

エントリーするとしたら、天井で売ると考えずに、下げ始めた(天井で反落した)ことを確認したタイミングがいいでしょう。天井でショートできなくても、リスクリワードを意識して、損切り幅より利食い幅のほうが大くできれば、トレードでは勝つことができます。

その際、時間帯も考慮します。売買が活発になる時間帯に上に抜けられないと、上値は重く、下がる可能性が高いのではないかと判断します。

BとCも、同じ環境です。

このように、トレンドフォローでは、ボラティリティが高いトレンド発生を見つけることができれば、同じ戦略で何度でも勝てます。

同じ戦略なので、難しいことは何一つありません。間違っていれば戦略を立て直し、正しければそれを繰り返すだけです。そうすれば、トレンドが続く限り、勝ち続けられます。

8.ボラティリティを測るその他のインジケータ

最後に、ボラティリティを測るインジケータ(テクニカル指標)をご紹介します。使い方によっては、効率良くチャート分析ができ、売買戦略が立てられます。

先ほどもお伝えしたように、私は、ボラティリティを測るために、

スキャルピング:エンベロープ

デイトレード:移動平均線

を使ってトレードしています。ボラティリティは、レンジとトレンドを見極めるために必要です。その原点として、ローソク足の集合体といえる移動平均線を重要視しています。エンベロープも、移動平均線が派生したものです。

8.1.ADX、ATR、ボリンジャーバンド

トレードで勝てれば何を使ってもいいのですが、最初は、視覚的に分かりやすいインジケータを使うといいでしょう。エンベロープと移動平均線以外では、例えば、次の3つのようなものです。

Average Directional Movement Index(ADX)

Average True Range(ATR)

Ballenger Bands(ボリンジャーバンド)

ちなみに、MT4チャートでは、次の場所に標準装備されています。

MT4チャートからインジケータを探す

ADXとATRは、簡単にいうと、変動率を求めてトレンドの強さをはかるものです。それが、ボラティリティの有無を測ることになります。

下のチャートは、先ほどと同じ局面のポンド円の15分足に、ADXとATRを表示したものです。ローソク足の下部に、ADXとATRがあります。

ADXとATR

真ん中の黄色いAとBにご注目下さい。ここは、安値を更新して下降トレンド回帰しているポイントでしたね。チャートの下を見ると、ADXとATRのどちらも上昇しています。

2つのインジケータが上昇している時はボラティリティが高く、下降している時はボラティリティが低い時です。つまり、ADXとATRの2つが同時に上昇しているということは、ボラティリティが非常に高い時といえます。

このようなボラティリティが高い時は、トレンドが発生する可能性も高くなります。

ここで注意していただきたいのが、インジケータは価格の上げ下げは反映していないということです。例えば、ADXやATRが上昇しているからといって、上昇トレンドではありません。

ADXやATRが上昇している時は、ボラティリティが高いというだけで、上昇トレンドか下降トレンドのどちらもあり得ます。

なお、チャートの左側は、ADXとATRの向きがバラバラですね。ADXは下降、ATRは上昇です。詳細は割愛しますが、これは、計算方法の違いによるものです。

このような現象は、経済指標などの突発的な乱高下で、何度も上下動している時によく現れます。向きがバラバラだと、どちらを信用していいか分かりません。

そのため、1つのインジケータだけで判断するのではなく、ADXとATRのように、2つを組み合わせることをおすすめします。複数のインジケータが同じ方向性を示すと、それは根拠が強いことになります。このチャートでは、AとBのポイントが、強い根拠ということになります。

次に、ボリンジャーバンドについて解説します。上述と同じポンド円の15分足に、ボリンジャーバンドを表示させたものが、次のチャートです。

ボリンジャーバンドのチャート

同じチャートですが、視覚的な印象はだいぶ変わりましたね。AとBは、先ほどのADXとATRと同じポイントです。ちなみに、ADXとATRはチャートの下に表示しましたが、ボリンジャーバンドは、ローソク足と一緒に表示するタイプのインジケータです。

ボラティリティが高く、トレンドが発生している箇所では、バンドが拡大していることがわかると思います。このように、ボリンジャーバンドでは、バンドの拡大と縮小で、ボラティリティの有無を測ります。

8.2.平均足

最後に、平均足を紹介します。平均足は、トレンドフォローという観点で、非常に見やすいインジケータです。

JFXのボラティリティ表で1位の、ポンドクロスのポンドオージー(GBP/AUD)の4時間の平均足チャートをご覧下さい。

平均足チャート

このようなボラティリティが高い通貨ペアは、AB間の下降トレンドのように、ひとたびトレンドが出たらぐんぐん進むので、平均足を表ボラティリティは、日本語にすると「価格変動率」と言います。これだけでは、パーセントで書くのか、pipsで書くのか、そもそも何の数字なのか、わからないと思います。

直訳すると「落ち着かない性質のもの、不安定なこと」になるのですが、これを相場に当てはめると、「乱高下すること」を意味します。乱高下をイメージしていただくために、次のドル円の5分足チャートを見比べて下さい。

ボラティリティの高低の比較

左側はトレンド相場で、価格が上下に大きく変動しているのがわかりますよね。この状態を、「ボラティリティが高い」といいます。経済指標の発表後などは、急騰や急落を繰り返し、ボラティリティが高くなる傾向があります。

一方、右側はレンジ相場で、価格の変動はあまりありません。この状態を、「ボラティリティが低い」といいます。日本時間の早朝など、売買する投資家が少ない時は、ボラティリティが低くなります(詳しくは後述します)。

このように、ボラティリティ(価格変動率)とは、一定期間における、値幅の大きさを表しているとお考え下さい。

整理すると、次のようになります。

ボラティリティが高い:価格変動が大きい時

ボラティリティが低い:価格変動が小さい時

ただし、ボラティリティは目に見えないためか、解釈の仕方は様々です。単純にpipsの「値幅」で解釈する場合や、「割合」で解釈する見方もあります。

割合とは、例えば、1時間で100pipsの値幅が出たとします。1時間のうちに、何百回や何千回と価格変動は起きているので、その割合こそボラティリティの高さだとする視点です。

ちょっと難しいですね。

そのため、まずは、ボラティリティには色々な見方があると認識いただければ大丈夫です。乱高下して値幅が出る相場をボラティリティが高い、そうでない相場をボラティリティが低い、と覚えておけば問題ありません。

2.ボラティリティの調べ方

JFXとヒロセ通商には、ボラティリティを計算してくれる便利なツールがあります。ボラティリティの計算方法を理解すると、自ずと「ボラティリティとはこういうもの」と分かってきます。

なお、ヒロセ通商とJFXでは、算出方法が少し違うので、それぞれご紹介します。

2.1.JFXのボラティリティ表

JFXのサイトを開き、左サイドバーの「情報コンテンツ」の中にある「ボラティリティ表」をクリックします(直接ご覧になる場合は、「ボラティリティ表」をクリックして下さい)。

JFXのボラティリティ表の場所

すると、ボラティリティ集計結果(東京市場時間帯の時間足比較・前週)が表示されます。

JFXのボラティリティ表

そして、目的に応じて、右上より「期間選択」と「集計方法(取引時間帯指定or時間足指定)」を選びます。

最後に、「決定」ボタンをクリックすると、瞬時に集計結果が表示されます(赤い数字が、ボラティリティ値)。ボラティリティが大きい通貨ペア順に表示され、ローソク足の高値と安値の値幅が大きいものが1位になります。

なお、JFXの計算方法は次のようになります。(ホームページより抜粋)

・通貨ごとの1分足4本値(始値・終値・高値・安値)を算出

・この4本値をもとに5分、10分、60分、1日の時間足ごとの「高値-安値」をpips換算

・指定された期間の取引時間帯で、先ほどのpipsを平均したものがボラティリティ値

ちなみに、上の画像の集計結果を見ると、上位は「ポンド(GBP)クロス」と「豪ドル(AUD)クロス」が多いですね。

ちなみに、ポンドクロスとは、ポンドドル以外の、対ポンドです。具体的には、ポンドオージー、ポンドニュージー、ポンド円などのことです。ポンド円は、ポンドクロスであると同時に、クロス円でもあります。

これに対して、ポンドドルは、ドルストレートになります。豪ドルクロスも同じで、豪ドル米ドル以外の対豪ドル通貨ペアのことです。なお、通貨ペアについては、『通貨ペアとは|FXトレードで勝つための正しい選び方』で解説してます。

このようにボラティリティが高いと、1回のトレードで利幅を稼ぐことができるので、スプレッドが広くても、特にデイトレードだと効率良くトレードできます。

このようなツールを使って、ボラティリティの高い/低い通貨ペアをトレードにどのように取り入れていくか、これから一緒に考えてきましょう。

2.2.ヒロセ通商のボラティリティ表

次に、ヒロセ通商でボラティリティをチェックする方法をお伝えします。

まず、ヒロセ通商のサイトを開き、左サイドバーの「MENU」の中にある「ボラティリティ表」か、画面右側に固定で置いてある「ボラティリティ表」をクリックします(直接ご覧になる場合は、「ボラティリティ表」をクリックして下さい)。

そして、集計方法は、右上から選択します。

ヒロセ通商のボラティリティ表ヒロセ通商のボラティリティ表は、JFXよりも長い期間で算出できるのが特徴です。なお、ヒロセ通商の計算方法は次のようになります。(ホームページより抜粋)

・通貨ごとに、1分足4本値の「高値-安値」を算出

・算出した「高値-安値」をpipsに換算

・同営業日内の先ほどのpipsを合計したものがボラティリティ値

さて、JFXとの算出方法の違いは、JFXでは時間足指定がありましたが、ヒロセ通商では営業日ごとの算出方法である点です。

ただし、営業日といっても、日足の高値と安値の値幅ではなく、上の囲いの中に書いてあるように、日足を形成する中の値動きです。1分足4本値で算出していることにご注目下さい。

3.リクイディティ(流動性)とセットで考える

ボラティリティを知ると、「リクイディティ」というワードも聞くようになります。

リクイディティとは、「流動性」のことで、売買したい時に、すぐに実行できるかどうかの性質です。ボラティリティとも関連性があるので、セットで押さえておきましょう。

まず、リクイディティが「高い」か「低い」で、次のように言うことができます。

リクイディティが高い:取引参加者が多く、取引量がある状態

リクイディティが低い:取引参加者が少なく、取引量がない状態

価格は、買いたい人と売りたい人がいるから決まりますね。そして、自分が売りたい時に買い手がいないと、売ることはできません。

わかりやすいように、不動産で考えてみましょう。

例えば、人が誰も住まない、人里離れた土地を売ろうとしても、売り手はなかなか現れないでしょう。売りたい時に売れない状態が、「流動性が低い」と言います。一度買ったら、なかなか売れない状態ということです。

不動産は極端な例ですが、FXも同じです。為替では、1秒間に何回もレート更新していますね。売買が成立しているからこそ、レートが更新します。つまり、為替市場は、常に市場参加者がいる状態にあります。

そして、一時的に、参加者が少なくなる時があります。このような時は普段と違う値動きをするので、注意が必要です。

参加者が少ないと、売りたいレートのところに買い手がいないことになります。買い手がいないと、どんどん価格は下落していきますね。そうすると、投げ売り(いくらでもいいから売ってしまうこと)が出て急落することがあります。

また、参加者が少ないと、いつもよりも少ない取引量で相場を牽引できるため、機関投資家が意図的にトレンドを形成したり、暴落させることもできます。

このように、リクイディティが低いと、結果として、ボラティリティが高い相場になることがあります。逆に、リクイディティが高くても、ボラティリティは低い相場もあります。

そのため、リクイディティ(変動率)とボラティリティ(流動性)は、単体ではなく、セットで考えることが重要です。

特に、数pipsを狙って売買するスキャルピングの場合、ボラティリティとリクイディティ次第で値動きが変わるため、損益に影響を与えます。

4.ボラティリティの判断方法

ボラティリティの高低を認識する上で一番重要なことは、リアルタイムの相場で理解することです。つまり、「現在の相場はボラティリティが高いのかどうか」ということです。トレードする前にこれを把握することで、より適切な売買の判断ができるようになります。

経験が浅い方でも、すぐに判断できるおすすめの見分け方は、

トレンド相場

レンジ相場

の見極めをすることです。往々にして、トレンド相場だとボラティリティは高く、レンジ相場だとボラティリティは低いです。相場の性質として、このように覚えておけば問題ないでしょう。

下のチャートは、ポンドドルの30分足チャートです。

ポンドドル30分足チャート

レンジで推移していた相場が、Aで下へブレイクしました。ここから下降トレンドがスタートしていますね。

また、ABCDは、それまでの安値を更新してトレンドを強めたポイントです。このような箇所では、ボラティリティが非常に高くなります。チャートで見ても、陰線が連続したり、他の箇所と比べてローソク足が長くなっていることがわかります。

ABCDのようなポイントでは、短い時間足(特に1分足)を見ていると、ボラティリティの高さが非常によく分かります。そのため、スキャルピングをする場合、ボラティリティが高まるポイントの見極めができるようになると、利益を出しやすくなります(詳細は、7章で解説します)。

5.ボラティリティが高くなる3つの時間帯

しかし、ボラティリティが高まるまでずっとチャートを見て待つのは大変ですよね。しかし、心配ありません。なぜなら、ボラティリティが高まる時間帯は、おおよそ決まっているからです。

為替市場は、株式市場と異なり、東京証券取引所のような取引所が存在しません。月曜日から金曜日まで24時間取引ができますが、1日のうち、売買が活発になる時間帯は次の3つです。

アジア:日本時間9時~12時

ロンドン:日本時間15時~18時

ニューヨーク:日本時間21~25時

この時間帯は、その地域の機関投資家が出社して取引を開始する時間にあたるので、為替市場はもちろんのこと、株式式市場や債券、商品など金融マーケット全体が活発になります。売買が活発になると、必然的にボラティリティが高くなり、トレンドが発生するようになります。

下のチャートは、1日を3つの時間帯に分けたものです。

アジア時間とロンドン時間とニューヨーク時間

Aの白い大きな四角が、ある1日の7時から翌日の7時です。左から、アジア、ロンドン、ニューヨークの3つの時間帯です。この日は、ロンドンタイムの午前にあたる時間帯で、上昇トレンドが発生したことが分かります。

FXの値動きの特徴は、3つの市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)の午前はボラティリティが高くなり、この3つのうち、どこかでトレンドが発生することです。

これを知っておくだけでも、戦略が立てやすくなるので、必ず押さえておきましょう。詳しくは、『FXの取引時間別の特徴とトレード戦略の立て方』で解説しています。

6.トレードで意識すべき2つのポイント

ボラティリティが高くなる時間帯が分かっても、今日がどうなるのかの見極めが必要です。

毎日、全ての通貨ペアのボラティリティが高まるわけではりません。時期によって、ボラティリティが高まる通貨ペアや動き方は、全く異なります。

そのため、準備をしていないと、たとえボラティリティが高くなっても、どのようにトレードしていいのか分からないです。

大事なことは、未来の相場でボラティリティが高くなった時に、どのようにトレードするかの準備をしておくことです。そのためには、前日までの相場を分析し、次の2つのことまで考えておくことが大切です。

・ボラティリティが高い通貨ペアは何か

・充分なリクイディティはあるか

これを事前に考えることで、容易にトレード戦略が立てられます。順番に見ていきましょう。

6.1.ボラティリティが高い通貨ペア

先ほど、JFXのボラティリティ表で見たように、ポンドクロスや豪ドルクロスは、元々ボラティリティが高い通貨ペアが多いです。

昔は、ポンド円がハイボラティリティの代表でしたが、2008年のリーマンショックで大暴落し、250円まで到達した価格が半分以下になりました。

しかし、それ以降は、低い価格のまま推移しているので、以前ほどのボラティリティはありません。それでも、ドル円よりボラティリティが高いことは確かです。

このように、ボラティリティは、月単位、週単位、日単位で刻々と変化しています。

昨日までドル円が乱高下していても、ファンダメンタルのイベントが終われば、注目度が落ちて翌日からピタッと値動きが膠着することもよくあります。そのため、ボラティリティが高い通貨ペアは、時期によって変化しているとお考え下さい。

例を挙げます。下のチャートは、2016年11月のアメリカ大統領選挙の時のドル円の日足です。

アメリカ大統領選挙時のチャート

Aの四角がちょうどその時で、マーケットにとって大きなイベントで、強烈な上昇トレンドが発生しました。驚くことに、1か月で1,500pips以上も上昇しました。ボラティリティが非常に高く、スキャルピングしやすかったことを鮮明に覚えています。

しかし、イベントが終わると、注目は他の通貨ペアに移り、ドル円は長いレンジ相場に移行しています。Aの頃のようなボラティリティはなく、同じ通貨ペアとは思えないほど、値動きが変化してしまったことがわかります。

このような変化は、他の通貨ペアでも起こります。時期によって注目される通貨ペアと蚊帳の外になる通貨ペアがコロコロと入れ替わり、ボラティリティもリクイディティも大きく変化していきます。その変化についていけないと、同じやり方でトレードしても通用しなくなります。

そうならないよう、現在注目されている通貨ペアを探し、日々のボラティリティの変化に注目し、さらに3つの市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)に分けて、その日の値動きを注視することがポイントです。

6.2.充分なリクイディティはあるか

ボラティリティが高くても、トレードで勝てるとは限りません。上述した、リクイディティ(流動性)も考慮する必要があります。特に、スキャルピングをやる場合、リクイディティの有無で値動きが大幅に変わります。

まず、リクイディティが高い状態は、あまり意識しなくていいでしょう。なぜなら、これが普通の状態だからです。ボラティリティが高い時間帯は売買が活発になるので、売りたい時に売れて、リクイディティは充分です。

気を付けなければいけないのは、リクイディティが低くなる時間帯で、機関投資家が相場から離れる時です。1日の中でいうと、日本時間の早朝5時~7時前後です。

この時間帯は、日本の機関投資家は出勤前です。欧米では夕方から夜間にあたり、世界のどのマーケットでも参加者が少なくなり、リクイディティが低くなり、値動きが不自然になります。

不自然とは、少し大きな注文が入っただけで一方向へ大きく動いてしまうような状態のことです。大きな注文を受け止めるだけの反対売買も少ないため、急騰や急落が起きやすくなります。もしくは、その逆に、全く動かない膠着した相場になります。

また、注文自体が無いので、レート変動が無くなります。そうなると、ローソク足が変な形になります。これは、下のドル円の1分足チャートを見ると分かります。四角い箇所にご注目下さい。

リクイディティが低いチャート例

ご覧のように、1分間で1pipsも動いていない(ローソク足の形がない)ものがあれば、上ヒゲと下ヒゲが極端に長いローソク足もありますね。前後のローソク足と比べると、不自然なことが分かります。

このような時は、1分単位でトレードするスキャルピングは影響を受けます。期待値が高いトレード戦略を持っていたとしても、リクイディティが低い時に通用しなくなる可能性があります。

なお、期待値については、『ランダムウォーク理論|トレードで勝てる人の確率と期待値の考え方』)で解説しています。

リクイディティが低い時でも、あなたのトレードルールが、ボラティリティとリクイディティを考慮したものか、見直してみて下さい。ボラティリティが高い相場では通用しても、リクイディティが低い相場では通用しないとなると、勝てない時期がいずれ訪れます。

このことは、先ほどの1日の中における1分足の例ですが、数か月に渡ってボラティリティもリクイディティも低い時期があったりします。特に、スキャルピングなどの短期売買は常にこの2つを考慮する必要があります。値動きが変わって勝てなくなった、というのでは後の祭りです。

では、上記2つの観点から、ボラティリティが高い通貨ペアと低い通貨ペアにはどんなものがあるのか、具体的に表で確認してみましょう。

ボラティリティ リクイディティ 通貨ペア例

メジャー通貨 高 高 ドル円、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドル、

ユーロ円、ポンド円、豪ドル円など

マイナー通貨 中 低 フォリント円(HUF/JPY)

クローネ円(NOK/JPY)

ズロチ円(PLN/JPY)

トルコリラ円(TRY/JPY)など

メジャー通貨ペアは、リクイディティが低い時間帯や時期がありますが、ボラティリティもリクイディティも基本的には高いと覚えておいて問題ないでしょう。

一方、マイナー通貨ペアは、聞いたことないような通貨ペアばかりですね。トルコリラ円(TRY/JPY)は、スワップポイントが高い通貨ペアとして馴染み深いかもしれません。しかし、そもそもリクイディティが低いので、スキャルピングを含む短期売買には不向きです。

マイナー通貨ペアでも、スキャルピングができないことはないかもしれませんが、自然な値動きをするメジャー通貨ペアを差し置いて、あえて選択する理由はありません。

7.トレードスタイルによるボラティリティの判断方法

この章では、私のトレードスタイルごとの戦略と、どこに着眼しているかをお伝えします。

もちろん、これはほんの一例で、利益を上げる方法は無数にあります。一つの例として、参考にしていただければと思います。

まず、FXのトレードスタイルには大きく分けて3つです。

①スキャルピング

エントリーからイグジットまで、数秒から数十秒で完結させる超短期売買。損益変動のリスクが非常に少なく、数pipsという薄利を何度も取ることでコツコツ利益を上げる。トレード回数が莫大で、毎日集中して数時間トレードできる環境が必要。

②デイトレード

数十分から数時間の間、ポジションを保有するスタイル。1回のトレードで利幅が稼げるので、無駄なトレードが無くなり、効率よく利益を上げることが可能。

③スイングトレード

一度ポジションを持ったら、数日から数週間は保有するスタイル。戦略を立ててポジションを取るまでにある程度の時間を要するが、エントリー後は相場に張り付く必要がなく、時間が取れない人でも可能なスタイル。

トレードスタイルによって、ボラティリティとリクイディティで考慮するポイントは違います。

次から具体的に説明していきますが、まだトレードスタイルが決まっていない方や、勝つための手順が知りたい方は、『FXのやり方|初心者が最初に身につけるべき9のコト』を先に読んでから読み進めると、理解しやすくなるはずです。

7.1.スキャルピングはエンベロープ

トレードにおいて、相場の流れに逆らってエントリーする逆張りは危険だと言われます。しかし、スキャルピングに関していえば、順張りも逆張りも有効です。保有時間が数秒から数分のトレードなので、どちらのやり方でも優位性はあるでしょう。

ポジション保有時間が長くなる15分足以上の上位足で逆張りすると、リスクリワード比率(損益率)が悪くなるので、長期的に見て期待値は低くなります。なお、リスクリワード比率については、『バルサラの破産確率でトレード技術を飛躍的にアップさせる方法』で解説しています。

ただ、逆張りだから危険というわけではありません。リスクリワードが悪くなるから良くない、というだけです。

スキャルピングは、ボラティリティが高くなると、とても優位性のあるトレードができます。なぜなら、1分足を形成する過程で、上にいったり下にいったりと、乱高下するからです。

では、私がスキャルピングでボラティリティを何で測っているかというと、エンベロープです。エンベロープは、トレードルールにも活用でき、ボラティリティを測るにも最適です。

下のチャートをご覧下さい。

エンベロープのゾーンの解説

まず、移動平均線を表示させ、その後にエンベロープを6本表示します。そうすると、①②③④⑤の5つの空間ができます。ボラティリティが高くなると、ローソク足が移動平均線から乖離し、この5つの空間のどれかに到達します。

ボラティリティが急激に高まった時は、⑤へ到達します。しかし、通常の短期トレンドだと、①で反転する、というイメージです。このように、私は、エンベロープを使って、ボラティリティの高さを5段階で判断しています。

なお、エンベロープを使った私のスキャルピングのトレードルールは、『エンベロープのFXでの実践的な使い方』で解説してます。

7.2.デイトレードとスイングトレードは移動平均線

次に、私のデイトレード手法は、日足、4時間足、1時間足などの上位足で大局を把握し、15分足でエントリータイミングを測るというものです。

次のチャートは、「4.ボラティリティの判断方法」でも使ったポンドドルの30分足です。3本の移動平均線にご注目下さい。移動平均線は、ローソク足の集合体ともいえるインジケータ(テクニカル指標)で、ボラティリティを図るのに極めて有効です。

デイトレードのチャート設定

トレンドには、短期、中期、長期の3種類があるので、移動平均線もこれに合わせて、次のように3本引きます。

黄色:25EMA(短期)

水色:75EMA(中期)

赤色:200EMA(長期)

チャートの左側に注目すると、レンジ相場の時は3本の移動平均線が収束していますね。ローソク足が移動平均線を上下していて、方向感がありません。

ローソク足と移動平均線の位置関係を見るだけでも、ボラティリティの高低は分かります。特に、200EMAが水平の時は、レンジ相場になります。

一方、チャートの右側のトレンド相場では、移動平均線が、上から200EMA→75EMA→25EMAと規則的に傾いています。トレンドが発生すると、このように、短期・中期・長期の3本の移動平均線のすべての傾きが同じ方向へ一致した「パーフェクトオーダー」という状態になります。

パーフェクトオーダーなら、レンジ相場よりもボラティリティは高くなる傾向にあります。さらに、3市場(アジア・ロンドン・ニューヨーク)の午前にあたる時間帯は、よりボラティリティが高くなります。もし、トレンドが発生していれば、心の準備をしてトレードに臨めます。

次のチャートは、ポンド円の15分足で、4日分の期間です。

ポンド円15分足

これも、3本の移動平均線にご注目下さい。1日目で、パーフェクトオーダーになっていますね。これで、ボラティリティの心配はせず、下降トレンドの目線でいられます。戻り売り(下落トレンドの一時的な上昇で売ること)のスタンスを持つことができます。

次に、Aにご注目下さい。戻り高値を上にブレイクすることができず、そのまま下降トレンドに戻っています。

エントリーするとしたら、天井で売ると考えずに、下げ始めた(天井で反落した)ことを確認したタイミングがいいでしょう。天井でショートできなくても、リスクリワードを意識して、損切り幅より利食い幅のほうが大くできれば、トレードでは勝つことができます。

その際、時間帯も考慮します。売買が活発になる時間帯に上に抜けられないと、上値は重く、下がる可能性が高いのではないかと判断します。

BとCも、同じ環境です。

このように、トレンドフォローでは、ボラティリティが高いトレンド発生を見つけることができれば、同じ戦略で何度でも勝てます。

同じ戦略なので、難しいことは何一つありません。間違っていれば戦略を立て直し、正しければそれを繰り返すだけです。そうすれば、トレンドが続く限り、勝ち続けられます。

8.ボラティリティを測るその他のインジケータ

最後に、ボラティリティを測るインジケータ(テクニカル指標)をご紹介します。使い方によっては、効率良くチャート分析ができ、売買戦略が立てられます。

先ほどもお伝えしたように、私は、ボラティリティを測るために、

スキャルピング:エンベロープ

デイトレード:移動平均線

を使ってトレードしています。ボラティリティは、レンジとトレンドを見極めるために必要です。その原点として、ローソク足の集合体といえる移動平均線を重要視しています。エンベロープも、移動平均線が派生したものです。

8.1.ADX、ATR、ボリンジャーバンド

トレードで勝てれば何を使ってもいいのですが、最初は、視覚的に分かりやすいインジケータを使うといいでしょう。エンベロープと移動平均線以外では、例えば、次の3つのようなものです。

Average Directional Movement Index(ADX)

Average True Range(ATR)

Ballenger Bands(ボリンジャーバンド)

ちなみに、MT4チャートでは、次の場所に標準装備されています。

MT4チャートからインジケータを探す

ADXとATRは、簡単にいうと、変動率を求めてトレンドの強さをはかるものです。それが、ボラティリティの有無を測ることになります。

下のチャートは、先ほどと同じ局面のポンド円の15分足に、ADXとATRを表示したものです。ローソク足の下部に、ADXとATRがあります。

ADXとATR

真ん中の黄色いAとBにご注目下さい。ここは、安値を更新して下降トレンド回帰しているポイントでしたね。チャートの下を見ると、ADXとATRのどちらも上昇しています。

2つのインジケータが上昇している時はボラティリティが高く、下降している時はボラティリティが低い時です。つまり、ADXとATRの2つが同時に上昇しているということは、ボラティリティが非常に高い時といえます。

このようなボラティリティが高い時は、トレンドが発生する可能性も高くなります。

ここで注意していただきたいのが、インジケータは価格の上げ下げは反映していないということです。例えば、ADXやATRが上昇しているからといって、上昇トレンドではありません。

ADXやATRが上昇している時は、ボラティリティが高いというだけで、上昇トレンドか下降トレンドのどちらもあり得ます。

なお、チャートの左側は、ADXとATRの向きがバラバラですね。ADXは下降、ATRは上昇です。詳細は割愛しますが、これは、計算方法の違いによるものです。

このような現象は、経済指標などの突発的な乱高下で、何度も上下動している時によく現れます。向きがバラバラだと、どちらを信用していいか分かりません。

そのため、1つのインジケータだけで判断するのではなく、ADXとATRのように、2つを組み合わせることをおすすめします。複数のインジケータが同じ方向性を示すと、それは根拠が強いことになります。このチャートでは、AとBのポイントが、強い根拠ということになります。

次に、ボリンジャーバンドについて解説します。上述と同じポンド円の15分足に、ボリンジャーバンドを表示させたものが、次のチャートです。

ボリンジャーバンドのチャート

同じチャートですが、視覚的な印象はだいぶ変わりましたね。AとBは、先ほどのADXとATRと同じポイントです。ちなみに、ADXとATRはチャートの下に表示しましたが、ボリンジャーバンドは、ローソク足と一緒に表示するタイプのインジケータです。

ボラティリティが高く、トレンドが発生している箇所では、バンドが拡大していることがわかると思います。このように、ボリンジャーバンドでは、バンドの拡大と縮小で、ボラティリティの有無を測ります。

8.2.平均足

最後に、平均足を紹介します。平均足は、トレンドフォローという観点で、非常に見やすいインジケータです。

JFXのボラティリティ表で1位の、ポンドクロスのポンドオージー(GBP/AUD)の4時間の平均足チャートをご覧下さい。

平均足チャート

このようなボラティリティが高い通貨ペアは、AB間の下降トレンドのように、ひとたびトレンドが出たらぐんぐん進むので、平均足を表示すると非常に分かりやすいのが特徴です。

Aで、三角持ち合いを下抜けていますね。それから下降トレンドが発生しているのがわかります。陰線が連続しており、陽線が出るまでショート戦略を繰り返せば、かなりの利幅が稼げる場面です。ちなみに、Bの四角の箇所で300pipsもありました。

4時間足だと、ちょっとした戻りでは陽線にならないため、戦略も二転三転することなく、難しさを感じないでしょう。Bでは、20本以上の陰線が出ているので、約3日の下降トレンドです。ブレイクした後にボラティリティが高くなり、陰線が連続すれば、それは強いトレンドになります。

なお、4時間足より短いローソク足だと、陽線と陰線の切り替わりが早くなるので、ダマシも増えます。これを防ぐ方法として、平均足では大局をつかみやすい4時間足で私は使っています。

まとめ

ボラティリティは、目で見て判断するものではなく、値動きを体感して初めて分かるものです。その時、通貨ペアや時間帯、リクイディティも並行して考慮し、総合的に判断するクセをつけて下さい。そのために、まずは、トレードを実践することから始めましょう。

相場によってボラティリティが変わることを理解し始めた時、あなたのトレードルールも決まってくるでしょう。それは、勝てることを意味します。ぜひ、勝ちトレーダーになりましょう!示すると非常に分かりやすいのが特徴です。

Aで、三角持ち合いを下抜けていますね。それから下降トレンドが発生しているのがわかります。陰線が連続しており、陽線が出るまでショート戦略を繰り返せば、かなりの利幅が稼げる場面です。ちなみに、Bの四角の箇所で300pipsもありました。

4時間足だと、ちょっとした戻りでは陽線にならないため、戦略も二転三転することなく、難しさを感じないでしょう。Bでは、20本以上の陰線が出ているので、約3日の下降トレンドです。ブレイクした後にボラティリティが高くなり、陰線が連続すれば、それは強いトレンドになります。

なお、4時間足より短いローソク足だと、陽線と陰線の切り替わりが早くなるので、ダマシも増えます。これを防ぐ方法として、平均足では大局をつかみやすい4時間足で私は使っています。

まとめ

ボラティリティは、目で見て判断するものではなく、値動きを体感して初めて分かるものです。その時、通貨ペアや時間帯、リクイディティも並行して考慮し、総合的に判断するクセをつけて下さい。そのために、まずは、トレードを実践することから始めましょう。

相場によってボラティリティが変わることを理解し始めた時、あなたのトレードルールも決まってくるでしょう。それは、勝てることを意味します。ぜひ、勝ちトレーダーになりましょう!

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